DICOMGEAR導入事例:株式会社KDDI研究所

「医用画像を含む多様な画像フォーマットに対応し、多くの画像処理機能を持つ開発キットを求めていました。」

株式会社KDDI研究所が開発した「MobileMIMAS」は、携帯電話を利用した医用画像の閲覧システムである。病院内で撮影されたCTやMRIなどの画像を携帯電話で精細に見ることができるため、緊急時に専門医が外出先から病院の当直医に指示を与えることができるなど、迅速で的確な医療活動をサポートする。

日本の4大疾病にも挙げられている脳卒中。その対処には、発症してから2時間以内に搬送し、その後、病院内で1時間以内に処置すること、つまり発症してから3時間以内に処置することがガイドライン(脳卒中合同ガイドライン委員会が作成した『脳卒中治療ガイドライン』)で求められている。ところが日本では、診断するための機器であるCTやMRIは世界一整備が進んでいるが、それを駆使して診断できる専門医が少ないという現状がある。KDDI研究所では、こうした問題を抱える脳外科を主なターゲットに、緊急時携帯電話医用画像伝送システム「MobileMIMAS」を展開し、専門医による迅速な診断につなげている。

導入のポイント

  • 豊富な画像処理機能を持つDICOMGEARのおかげで、苦労なく、しかも低コストで実現できた
  • 日本に代理店があり、日本語でサポートが受けられる
  • 外部からの画像のデコードをDICOMGEARに任せることで、 新たな画像フォーマットが増えても 柔軟かつ低コストで対応できた

KDDIだからこそ可能になったセキュアな画像伝送

KDDI研究所 メディアソリューショングループ 主任研究員の徳竹政幸氏は、MobileMIMASの特長を、「院内でのビューアと同じような操作性で、複数の画像を連続して、かつスピーディーに見られること」と説明する。携帯電話での実際の動作は、高精細な画像が実にスムーズに表示される。

データ圧縮して伝送する関係上、院内の画像データと比較すると多少の劣化はあるものの、診断に影響することはないという。

「名古屋大学医学部脳神経外科などとの共同研究により、診断に問題はないとの結果をもらっている」(徳竹氏)とのことだ。

MobileMIMASの動作を簡単に説明しよう。

CTなどの院内機器で撮影された画像は、DICOMという医用画像のフォーマットで記録される。このDICOM画像をMobileMIMASのサーバーが取り込んで処理が行われる。

このとき、画像データのみを取り出したり、患者名や画像の階調変換のパラメータといった付帯情報などを「DICOMGEAR」を使って取り出し利用している。 その後、画像データはKDDI研究所で独自に開発したJPEG2000エンコーダによりJPEG2000フォーマットに変換され、専用線とau携帯電話網を通じて専門医の持つ携帯電話に伝送される。
携帯電話側では専用アプリケーションを使い、伝送された画像を院内機器と同様の操作性で、スピーディーかつ高画質で表示する。

MobileMIMASの特長は、高画質な医用画像伝送だけではない。セキュリティの面でも安心できるシステムになっている。CTなどの医用画像は、厳重に保護されるべき個人情報となる。

MobileMIMASではデータの伝送に専用線を使用しているため、インターネットを利用したWebによる画像閲覧システムと比べて、秘匿性の高いよりセキュアなシステムになっている。また、事前に登録した携帯電話でしかビューアソフトをダウンロードできないため、登録されていない携帯電話では画像を閲覧できない。
さらに携帯電話のロック解除パスワード、ビューアソフト起動時のパスワード、サーバアクセス時のパスワードと3重の認証が行われるため、運用に際しては万全とも言える配慮がなされている。

豊富な機能で工数やコストを削減

MobileMIMASの開発において苦労した点を、メディアソリューショングループ 主任研究員で工学博士の橋本真幸氏は次のように語る。「携帯電話で大量の画像を高速に表示するために、携帯電話側のデコーダを独自に開発しました」

あえてデコーダを独自開発し、携帯電話に画像を伝送する際のフォーマットにJPEG2000を選んだ理由は、「画像を階層的に保存することができるので、サムネイルの部分だけを表示させ、細かい部分を後から表示させるなど、高速に画像を表示させる工夫がしやすかった」からと橋本氏は説明する。もちろん、DICOM画像を扱うサーバ側での実装は「豊富な画像処理機能を持つDICOMGEARのおかげで、苦労無くしかも低コストで実現できた」(橋本氏)との言葉はDICOMGEARの有用性を物語っている。

安心の日本語サポート

MobileMIMASには歴史がある。その開発は、VisualC++6.0を使って行われ、ライブラリとしてDICOMGEARDLLを利用している。DICOMGEARを選択した理由の一つに、「開発当初、医用画像(DICOM画像)の取り扱いはわれわれの専門ではなく、詳しくなかった」(橋本氏)ことを挙げるが、当時から日本に代理店があり、日本語でサポートが受けられる点もポイントだった。 MobileMIMASを導入する医療機関の機器の中には新しいDICOM規格を採用しているものもあり、それには新しいバージョンのDICOMGEARに置き換えて対応したが、単純にライブラリの置き換えで済まなかったときでも、検証環境を自社に持つ株式会社ラネクシーの対応によって、スムーズに対応できたと言う。「もともとDICOMGEARは海外の製品ですが、日本の代理店があるというのが安心して使えるところですね」(橋本氏)

最新の画像フォーマットが増えても対応

MobileMIMASでは、DICOM画像のほか一般のデジタルカメラで撮影したJPEG画像などにも対応しており、これらの画像のデコードにもDICOMGEARが使われている。 外部からの画像のデコードをDICOMGEARに任せることで、新たな画像フォーマットが増えても柔軟かつ低コストで対応できるのも魅力のようだ。

現在、MobileMIMASはWindows Server 2003上で稼働しているが、WindowsServer2008への移行も考慮中と言う。開発環境もVisual Studio 2008へと変わる可能性があり、.NET Frameworkに移行することも視野に入れているそうだ。この時も、DICOMGEARはすでに.NET Frameworkに対応しているので、今後も使い続ける予定と橋本氏は言う。

MobileMIMASは「『東海ネットワーク医療コンソーシアム』加盟の十数病院や、京都や横浜の病院でも採用していただいています」と徳竹氏。通常だと専門医が病院に駆け付けるまでに20分程度を要する。この20分の間に専門医がMobileMIMASを使って画像を確認し、手術の準備を指示しておくことで、駆け付けてすぐに手術が開始できる。「1分1秒を争う場面で効果的だった、と言われた時はうれしかったですね」と橋本氏は語る。

MobileMIMASは、DICOMGEARによるDICOMを含む多様な画像フォーマット対応や、日本正規代理店による手厚いサポートといった特長を活用した、医療現場で活躍するシステムだ。脳外科というニッチなマーケットをターゲットとしているが、今後のさらなる普及によって、より多くの命を救うことを期待したい。

MobileMIMAS利用の流れ

医用画像処理ソフトウェアDICOMGEAR

「DICOMGEAR」は株式会社ラネクシーが販売する高速画像処理コンポーネント。医用画像処理に対応し、CTなどの医用画像を簡単に扱えるようになっている。さらに姉妹品であり、DICOMGEARの一部を構成する「ImageGear」は、JPEGやPNGなどの標準画像フォーマットはもちろん、各種デジタルカメラのRAWフォーマットをはじめ、PDFやCADデータなどの多様な画像フォーマットに対応し、画像の読み込み、保存、フォーマット変換を可能とする高速画像処理コンポーネントだ。世界最高水準の画像処理ソフトウェア開発キットとして、全世界6000の開発会社で使用され、5000万本以上の応用実績がある。

KDDI研究所

所在地 〒356-8502 埼玉県ふじみ野市大原2-1-15
設立 平成10年4月1日
(平成13年4月1日にKDD研究所と京セラDDI未来通信研究所が合併)
社員数 272名(平成21年4月1日現在)
URL http://www.kddilabs.jp/
KDDI研究所は、固定通信と移動通信、さらには放送との連携を考えたFMBCの時代を支え、あらゆる通信システムやインフラの整備を進め、NGNや超高速無線伝送技術、セキュリティ技術、画像処理技術、さらにはこれまでにないアプリケーションの開発や将来を見据えた基礎技術基盤を担うための最先端技術に至るまで、幅広いテーマで世界トップレベルの情報通信技術の研究開発やさまざまな取り組を進めています。